なぜ、藍を気軽に扱ってはならないのか🌿
趣味や家庭で楽しむ分には、何も申しません。
個人の創作活動も。
中でも、求める色に貪欲に独自の工夫を凝らすのが「アーティスト」と呼ばれる作家さんたち。
一流の作家さん方は「伝統工芸である藍染」に深い敬意をお持ちですから、
本来の手法と自分の手法との違いを明確に理解した上で、求める芸術表現をしています。
伝統工芸のジャンルを、
安易に事業化しては絶対にいけません⚠️
なぜか。
身勝手な解釈や手法の情報を拡散し、結果として伝統工芸に手を加えてしまうことになるからです。
「知らなかった」では済まされない、深刻な問題を次々と引き起こしてしまうからです。
いま、藍染の業界も波乱の時期を迎えています。
東京オリンピックを機に日本回帰が進み、伝統文化や工芸に光が当たりました。
それにより藍染人気も強まり、存在が見直され、
多くの皆さんが藍染に興味関心を持たれた事は大変喜ばしい事でしたが、
人気商売として安易な気持ちで藍に飛びついた団体や業者も、残念ながら一気に増えました。
青であれば藍染か?
本質に目を向けず色を追うだけの藍染は、
藍染とは似て否なるもの。
こうした現状は、
古くからの技を真摯に守り研鑽し伝える藍師さん方やお家に、再び新たな辛苦を課しているのです…
「正藍染」という言葉もあり、
他と区別しようという動きもあります。
ホンモノ か
ニセモノ か
戦わざるを得ない状況を作っています。
特にルーツ(継承)を無視した安易な新規参入は、
このように世の中がクリーンさを求めるようになったからには
言葉悪いですが「ニセモノ」側であることは否めません。
「藍で地域貢献したい」
「休耕地を藍で救いたい」
「子供たちに伝統文化を伝えたい」
残念ながら、できません。
想いとは真逆の方向へ進みます。
そればかりか、
ルーツを軽視した突発的な藍事業では、誤った教育をし、企業や地域の品位を落とします。
そのような行為自体が誤りであると、子供たちにも教えていかなければなりません。
また、藍染に使われる古来の品種を、窮地に陥れる事にもつながります。
突如現れる藍事業は、
美しい里山に突如持ち込まれた「外来種」の存在に似ている気がします。
工芸分野に現れる「チョウザメ」や「ピラニア」、「キンケイギク」…
何も知らず「きれいだから🌼」と持ち帰り、広い土地で育ててしまったガーデナーが、ガーデナーとして信用を地に落とすのと同じこと。
教育現場の方々、
行政の方々、
伝統工芸を扱う企業の方々…
この実情をぜひ、
知っていただきたいと願います。
私たちの身の回りの殆どの草はタデ科です。
いずれも染める成分はなく、藍染に使われる古来種と容易に交配し、
それを繰り返すことで「染まらない藍」を増やし、それもまた藍染の衰退を招くのです。
良かれと思って藍染に手を出し、
「知らなかった…」の連鎖で引き起こす損害は、内に外に、あまりにも甚大です。
だからこそ藍を、気軽に扱ってはいけないのです。
然るべき場所で学び、楽しむにとどめてください。
そしてお家で継承を願う場合は、ご家族と将来をとことん話し合い、人生かけて守り通せる覚悟と誠意を確認し、書面にして、しっかりとしたお家柄との繋がりを然るべき方に繋いでいただくよう申し出られる事から始められるのが良いかと思います。
真摯に手順を踏み、何年かかっても信用を得て、お許しを得ることが何より大事です。
継承は、知識と技だけではありません。
それぞれのルーツには強い「理念」があります。
伝統工芸の世界は厳しく、難しく、重い。
そこを煙たがるようでは、伝統工芸を扱う資格はないと思います。
けして正しい方向にも発展しません。
私たちがこんな話題を言葉にするのは、
もっともっと何年も先のことだと思っていました。
常葉がこのことを理解できる歳になった頃か、
雇い入れる方やそのご家族に委ねるときか。
ですが、それは大きな間違いでした。
こんな現状ですから
藍を深めることと同時にしなければならない仕事でした。
書道もいけばなもこれに同じです。
無知から生まれる過ちが、ひとつでも未然に防げますように。